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平成28年12月27日改訂

このページは「書き込みを『した』(と疑われている)方」向けです。具体的には、発信者情報開示請求の意見照会書を受領した方を想定しています(事前も含みます。)。書き込みを「された」トラブルについては,ネット上の表現トラブルをご覧下さい。

この分野については無料相談を実施しています。即日で無料で電話法律相談を承ることも可能です(ただし,事案や予約状況等によります)。私達は,この分野については4年以上継続して取り扱っており,プロバイダや相手方業種,事案のパターンに応じたアドバイスをすることが可能です

掲示板管理者・プロバイダの立場からの解説は「プロバイダ・掲示板等の管理者と発信者情報開示請求」をご覧下さい。

また,相手方との交渉代理や意見書の作成も承っております。詳しくはこちらをご覧下さい。 

法律と裁判の基礎の基礎から、発信者(投稿者)の責任や法律手続について、一般向けに解説したものとして、その「つぶやき」は犯罪です(共著・新潮社)があります。こちらもご覧下さい。

発信者情報開示請求とは

※インターネット上の表現トラブルについては,こちらでも解説しています。

※なお,この記事は,他のコラムと異なり,企業以外の一般の方にわかりやすいように記載しています。

注意:ご相談をお考えの方は,すぐにお問い合せください。基本的に期限が2週間ですので,直前ですとお引き受けできません。また,法律相談も十分に出来ないことがあります

インターネットを利用した情報発信が普及し,個人であっても容易に情報を発信することが可能なりました。

それに伴い,表現上のトラブル,具体的には,ある個人が発信している情報により,他人の名誉権や知的財産権を侵害するというケースも多々生じるようになりました。

別ページで解説していますが,閲覧者(請求者)からみてわかるのは,実際に書き込みを行った者(発信者)ではなく,発信者が利用しているサーバーだけです。たとえば,とある通信業者のブログに問題の記事が掲載されているとしても,発信者が積極的に本名を公開しているのでなければ,請求者からわかるのは,その通信業者が提供するサービスを利用したブログ,URL:http://…に,問題の記事があるということだけです。

ところで,通信業者は,発信者から依頼(サービスに申し込んで書き込みをした,ということです。)を受けて,ブログサービスを提供しているわけですから,発信者からその個人情報を受け取っています。これは,登録時に記載した本名も含まれますが,そのようなものがなくてもIPアドレス(インターネット上の電話番号のようなものです。)が記録されている場合がほとんどです。

ですから,請求者としては,通信業者に対して,発信者の情報の開示を請求することが考えられます。これが,発信者情報開示請求と呼ばれているものです。

書き込まれた人からだけでなく,書き込んだ人から相談を受けることもしばしばあり,あまり情報のないところですので,今回,解説を掲載することにしました。

請求者・発信者・通信業者の三者の関係

請求を受け取った通信業者としては,そのまま開示するか,それともしないかという選択肢があります。

ただ,ここで問題になるのが,発信者としては自分の情報を開示して欲しくないわけですし,一方で請求者としては,開示してもらわないと被害回復できないという事情があることです。つまり,通信業者としては開示して欲しい被害者と,そうではない発信者との間で「板挟み」となるということです。

通信業者としては,第三者(場所を提供しているという点で,全く関係が無いとはいえませんが。)であるにもかかわらず,このような板挟みの立場に置かれ,非常に苦慮することになります。

これについて,従前は,裁判例などは「条理(社会通念,常識といった意味です。)」を用いて調整をしてきましたが,通信業者にとっては,ケースバイケースになってしまい,判断に困るケースも多々ありました。

そこで,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(『プロバイダ責任制限法』という通称名で呼ばれています。)」が制定され,このよう場合の三者の関係に一定の法律上の規律が設けられました。

この法律によれば,基本的には通信業者としては,発信者の意見を聞いた後,開示をするかどうかを決めることになります。

発信者情報開示請求照会書とは

この例では,通信業者が発信者から意見を聞く必要があります。この時,意見を聞く際に用いられる書面が「発信者情報開示請求照会書」です。ただ,何か正式な名称が決められている,というわけではありません。

これに対して,発信者は,「回答書」を書いて,通信業者に送ることになります。

「回答書」と開示の要件

一般に使われている書式によれば,①発信者情報開示に同意するかどうか ②発信者情報開示に同意しない場合の意見 を求められます。

①については,通常は拒絶するのがほとんどでしょうから,問題は②の内容になります。また,(あれば)証拠の提出も求められます。

すでに説明したとおり,通信業者はいわば第三者です。ですから,通信業者としては,開示するもしないもどちらの選択もあります。法律上,通信業者が開示をしなければいけないのは,

  1. 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。(法4条1項2号)
  2. 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。(法4条1項2号)

この二つ両方を満たす場合に限られます。

要するに,問題の情報が請求者の権利を侵害するものであって,発信者の正体が分かれば「請求者が発信者に対して何らかの請求をする事が出来る」場合に開示が認められるという事になります。

通信業者は,請求者からの請求に対して発信者に請求者からの請求のあったことを通知して,発信者からの意見をもらうことになっています。

「回答書」の重要性

通信業者としては,請求者の請求書に書かれている内容と添付の証拠,発信者が出した意見書の内容と添付の証拠,それぞれを検討して答えを出します。

この時点では(裁判になっていないのであれば),通信業者の判断で開示するかどうかが決まるので,請求者も発信者も,通信業者を説得することが何よりも大事ということになります。

ですから,回答書には,なぜ開示を拒絶するのか,もっといえば,開示の要件のないことすなわち請求者の権利を侵害していないこと,違法性のないことを根拠・証拠を摘示しつつ詳細に記載することが重要です。

また,この回答書は,裁判上は相手方に示されることもあり,後々の裁判所の証拠にもなり得るものですから,自分にとって不利益にならないように記載に注意することも重要です。

特に,通信業者が開示をしないという判断をし,請求者がそれに不服な場合には裁判になるケースがありますが,裁判において通信業者は,発信者が提出した意見書に沿って主張を展開することがありますので,その点からも極めて重要です。

更に,「後で裁判になったら主張すればよい」と考えて入念に主張しないと,訴えられて応訴(裁判に応じること)のコストが嵩みますし,請求者から,「●●という理由でこの情報を真実だと判断した,と主張しているが,当初はそんなことは言っていない。あとから慌てて調べて追加しただけではないか。虚偽であろう。」などと指摘される危険さえあります。

特に,名誉毀損が問題になるケースでは,行為時の発信者の主観的な認識が犯罪の成否において問題になることもありますので,安易な回答は,取り返しの付かないことになりかねません

よくある誤解

法律問題に限ったことではないのですが,不安になると誰しも「自分に都合のよい情報」ばかりを信用したくなる傾向があります

加えて,法律問題,特に紛争になっている事件というのは,全面的ではないにしても「(ある程度は)自分が正しい」とお互いが考えているものです。

そうなると,「正しい自分の言い分が通らないわけがない」「正しい自分の言い分に合わない情報は間違っているに決まっている」と,多かれ少なかれ,無意識のうちに思ってしまい,結果的に判断を誤ることになります。

法律問題,トラブルというのは,「自分が一切間違っていなくても発生してしまうことがある」「自分が悪いわけでもないのに適切な対応をしないと不利益を被る」という性質があります(病気と同じようなものです。)。

4年以上書き込んだ方からの受けてきた相談を踏まえまして,よくある誤解を以下に紹介します。

誤解に基づいて行動した場合,取り返しの付かない損害を被る可能性もありますので,くれぐれも注意が必要です。

  1. 開示には膨大な費用がかかるから,弁護士費用倒れを恐れて,ほとんどの会社・個人は発信者情報開示請求をしないはずだ。
  2. 弁護士費用は各自負担,請求できても被害額の1割なので,ネットの投稿の賠償金は大した額にはならないから安心だ。
  3. 自分は転載をしただけ,あるいは既に公開されている情報を掲載しただけなので大丈夫なはずだ。
  4. 訴訟にならないとプロバイダは絶対に開示しないので,そうなるまでは安心だ。
  5. とにかく訴訟になるまでは放置しておいてよい。
  6. こちらは,お金がないので賠償額は低額になるはずだ。
  7. ログの保存期間は3ヶ月だから,もう自分は大丈夫だ。
  8. 意見照会がこちらに来ない以上,開示されることはないはずだ。
  9. 裁判記録を閲覧して今後に備えよう。大丈夫,閲覧にリスクはないはずだ。
  10. 相手は「公人」だから大丈夫だとネットに書いてあった。
  11. ネットで,自分の投稿に問題はないという判例を教えてもらったから大丈夫だ。判決年月日や掲載誌はしらないけれど。
  12. ファイル共有ソフトの件で開示請求が来た。自分は身に覚えがない,知らないのだから,そう書いておけばよいはずだ。大丈夫,きっとプロバイダも裁判所も分かってくれるさ

プロバイダや相手方毎に対応を検討する必要性

最初にこのコラムを書いたのは4年近く前ですが,それ以来,この種の問題について,いろんな立場,状況の方から非常に多くのご相談やご依頼を承ってきました。

その中で実感したのは,最近,この種の事件が非常に増えているということ,また,発信者情報開示を請求する者はもちろんのこと,プロバイダによっても対応が区々な面もあるということです。

プロバイダによっては,「原則として開示」など法的に誤った対応をしようするところや,ほとんどこちらの主張を取り入れないなど,問題のある対応をするところもまま見られます(驚くべきことに,大手であってもです。)。

こういうプロバイダでも,法的な義務があることを法令や通達等を指摘すれば適切に対応してくれるところがほとんどですが,留意が必要です。

次に,企業や場合によっては個人でも,同様の発信者情報開示請求を繰り返しているところもまた,少なくありません。こういった場合は,すでに先行する訴訟があり,判決が商業判例データベースなどで公開されていることもあります。発信者情報開示請求においては,請求された側に充分な証拠がないこともありますので,いろいろなものを参考にし,活用することが大事です

開示に同意するという選択肢

実際のケースでは,まずほとんど無いと思いますが,開示に同意をするという方法もあります。

そもそも,インターネット上の表現で問題になるケースは,名誉毀損や著作権侵害が大部分を占めますが,いずれも刑事上の犯罪となり,被害者から告訴された場合には,刑事責任を追及されるおそれもあります。

刑事責任が追及される場合,例え不起訴になっても前歴となり,今後に不利益が生じることがありますし,起訴されれば罰金であっても前科となります。

ですから,内容からして,こちら側に明らかに非がある場合には,任意に開示を認めるという方法も考えられます。争って開示された場合,請求者の被害感情を徒に煽るだけではなく,請求者が費やす費用も嵩み,賠償請求額に跳ね返ってくることにもなりかねません。任意に開示に応じた後,裁判外で示談を目指すことも考えられます(もっとも,相手方次第の問題ですので,必ずしも思う通りに行かないことも考えられます。)。

ただ,一般に,通信業者が開示に応じるハードルは比較的高いので,この選択をするには慎重の上にも慎重な検討が必要になるでしょう。

まとめ

発信者情報開示請求照会書が届いた場合,一般の方であれば,非常に驚くのではないかと思います。

ただ,ネット上の表現は手軽ではありますが,結果は重大なものになることもしばしばあり,この書面は,事件の始まりとして非常に重要なものです。感情的になったり,あるいは,ずさんな判断で行動することなく,専門家の意見を聞いたり,あるいは代理人を依頼するなどして,慎重に対処することが重要です。

開示を拒絶する場合の回答書の具体的な書き方

回答書の内容は,発信した情報の内容や,その目的,さらに請求者が誰であるか,発信者の立場など,諸般の事情を考慮して決めるべきものですから,一概にこれを示すことは困難です。

ただ,今後,発信者として責任が追及されるかどうかに重大な影響があり,かつ,追及される際の資料になるものですから,概ね以下の点に気をつけて記載することが重要です。

  1. まず,相手方が侵害されたと主張している権利を把握する。
  2. 問題になっている情報は,請求者の権利を侵害していないこと,あるいは適法化されるべきものであることを主張する。
  3. 主張の理由付けについては,法令や裁判例を念頭に置いて記載する。自分が思いついたルールや,一方的な倫理観を振り回さない。
  4. あまり感情的な意見は記載しない。
  5. 事実の有無が問題になっているときは,それを証明する証拠を添付する。
  6. 請求者の悪性をことさら強調するだけでは不十分であるし,そもそも無意味な事が多い。あくまで,権利の侵害があるかどうかが問題なので,それを念頭に置く。
  7. 権利の侵害は客観的に決まるので,理由付けに自分の感情を過度に持ち出さない。
  8. 日本語として,主語述語の関係がよく分かるようにわかりやすく書く。
  9. 相手方を回答書の中で中傷すると,名誉毀損や著作権侵害などの刑法にも触れるケースでは,処罰感情を刺激し,刑事告訴などを招きかねないので注意する。

以上は抽象論・一般論ですが,自分が好きなように書くブログの記事などとは異なり,第三者に,自分の意見や見解を理解して賛同してもらうためのものですから,特に配慮が必要です。

IT法務.jpでは,発信者情報開示請求照会書(発信者情報開示にまつわる紛争)について,民事刑事の両面について,請求者・発信者の双方からご相談を承っています。まずはお問い合わせ下さい。また,表現トラブルとIT法務もあわせてご覧下さい。

(平成28年12月27日更新。平成24年12月23日作成。 弁護士 深澤諭史-なお,免責事項もお読み下さい